下村玉広の「しき錦」
- JBC
- 2024年2月25日
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更新日:1月30日
「しき錦」は、明治36年(1903年)5月に本田雲錦堂から出版された図案図譜で、下村玉廣の作品として知られています。この作品は、明治時代の日本における図案集の重要な一例として位置づけられ、当時の図案界の変革期を反映しています。
作品の概要と背景
- 書名:『しき錦』(しきにしき)
- 作者:下村玉廣
- 出版年月:明治36年(1903年)5月
- 出版社:本田雲錦堂
- 技法・材質:木版、紙
明治30年代は、日本の図案界にとって変革期であり、ヨーロッパの影響を受けつつ、伝統的な図案から脱却し新しい創意を持った図案が求められていました。「しき錦」はこのような背景の中で生まれ、図案の芸術化の試みを反映しています。
関係者と出版過程
下村玉廣:作者
神坂雪佳:校閲者、神坂雪佳(慶応2年-昭和7年)は、「しき錦」の校閲を担当しました。校閲者として関わったことで、作品の質や内容の確認に貢献したと考えられます。
本田市次郎:出版者(本田雲錦堂代表)、本田市次郎は、出版社である本田雲錦堂の代表者でした。彼は「しき錦」の出版者として重要な役割を果たしました。特筆すべきは、裏表紙に商号と情報を英語で印刷するという当時としては珍しい試みを行ったことです。
本田雲錦堂は、1887年(明治20年)に本田家の長男市次郎と三男金之助によって京都で設立された出版社で、主に染色図案集を出版していました。
作品の特徴と意義
- 木版による印刷で、日本の伝統的技法を用いつつ新しい図案表現を実現
- 工芸品の下絵としてだけでなく、それ自体が芸術作品として認識される
- 裏表紙に商号と情報を英語で印刷するという当時珍しい試みを実施
「しき錦」は、下村玉廣の独創的なデザイン、神坂雪佳の校閲、本田雲錦堂の出版ノウハウが融合した作品です。日本の近代化における美術とデザインの融合、伝統と革新の交錯を示す貴重な資料として、美術史的にも重要な位置を占めています。
下村玉広 画『しき錦』,本田雲錦堂,明36.5. 国立国会図書館デジタルコレクション https://dl.ndl.go.jp/pid/13212855