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尾形光琳筆 梅花・秋草図

  • 執筆者の写真:  JBC
    JBC
  • 2023年12月23日
  • 読了時間: 5分

更新日:1月25日


尾形光琳筆 梅花・秋草図は、江戸時代中期の画家、尾形光琳による絵画作品です。  メトロポリタン美術館に所蔵されており、 Mary Griggs Burke Collection, gift of the Mary and Jackson Burke Foundation の一部として一般公開されています。  この作品は二面一対ではなく、それぞれ独立した二枚の絵で構成されています。右側の絵には白梅が、左側の絵には秋草が描かれています。 制作年代は1701年以降と推定され、 江戸時代の絵画様式である大和絵の技法を用いています。   



作品の所蔵先と公開状況


前述の通り、梅花・秋草図はニューヨークのメトロポリタン美術館に所蔵されています。  同美術館は世界最大級の美術館の一つであり、様々な時代や地域の美術品を収蔵・展示しています。梅花・秋草図は、同美術館の日本美術コレクションの中でも重要な作品の一つとして位置付けられています。   



作品の基本情報

項目

内容

作品名

梅花・秋草図

作者

尾形光琳

制作年代

1701年以降

技法

大和絵

素材

紙本金地着色

サイズ

各152.7 x 365.1 cm

材料

紙、墨、金箔

所蔵先

メトロポリタン美術館

公開状況

一般公開

   


モチーフの種類と特徴


梅花


右側の絵に描かれている白梅は、光琳の特徴的な画風である「光琳梅」と呼ばれる様式で描かれています。  これは、輪郭線を用いずに、花弁を暈かしで表現する技法です。  また、幹の部分には「たらしこみ」と呼ばれる技法が用いられ、墨の濃淡によって木の質感が表現されています。  これらの技法により、白梅は画面上で生き生きと、そして華やかに描かれています。   



秋草


左側の絵に描かれている秋草は、薄(すすき)、萩、桔梗、白菊など、日本の秋を代表する草花で構成されています。  これらの草花は、古くから日本で愛でられてきたものであり、特に山上憶良の歌に詠まれた秋の七草は有名です。  光琳は、これらの秋草を繊細な筆致で描き、秋の野の静寂と、草花の可憐さを表現しています。  また、背景を省略することで、観る者の想像力を掻き立てるような空間を創り出しています。   


春と秋の対比

注目すべきは、光琳がこの作品で春を象徴する梅花と秋を象徴する秋草を対比させている点です。  これは、日本の四季の循環、そして生命の力強さと穏やかな衰退の双方に美を見出す日本的な感性を反映していると考えられます。   



光琳の画風の特徴と表現方法


尾形光琳は、琳派の代表的な画家として知られています。琳派は、装飾性とデザイン性を重視する画風で、俵屋宗達を始祖とします。 光琳は、宗達の画風を継承しつつ、独自の表現方法を確立しました。   


光琳の画風の特徴としては、以下のような点が挙げられます。


  • 大胆な構図:画面全体を大胆に使い、モチーフを大きく配置することで、力強い印象を与えています。梅花・秋草図では、白梅と秋草がそれぞれ画面いっぱいに描かれ、その存在感を際立たせています。

  • 装飾性:金箔や銀箔を効果的に使用し、華やかで装飾的な画面を構成しています。梅花・秋草図では、背景に金箔が用いられ、白梅と秋草の色彩を引き立てています。

  • デザイン性:モチーフを簡略化し、パターン化することで、洗練されたデザインを生み出しています。梅花・秋草図では、白梅の花弁や秋草の葉が、単純化されたフォルムで描かれ、装飾的な効果を高めています。

  • たらしこみ:墨の濃淡を活かした「たらしこみ」と呼ばれる技法を用いることで、独特の表現効果を生み出しています。 梅花・秋草図では、白梅の幹にたらしこみが用いられ、木の質感が表現されています。   


梅花・秋草図においても、これらの特徴が顕著に表れています。白梅の力強い表現、秋草の繊細な描写、そして背景の金箔の輝きは、光琳の卓越した技量と、独自の美意識を示しています。



光琳の生涯と他の作品との比較


尾形光琳は、1658年に京都の裕福な呉服商の次男として生まれました。 幼い頃から絵画や工芸に親しみ、30代前半に画業を志します。 44歳で法橋の称号を得て、本格的に画家として活動を始めました。 代表作には、「燕子花図屏風」、「紅白梅図屏風」、「八橋蒔絵螺鈿硯箱」などがあります。   


光琳の作品は、どれも装飾性が高く、デザイン性に優れています。 特に、金箔を背景に用いた屏風絵は、光琳の代表的な作品として知られています。 梅花・秋草図も、金箔を背景に用いた作品であり、光琳の画風の特色がよく表れています。   


他の作品との比較では、例えば「紅白梅図屏風」も金箔を背景に紅梅と白梅を描いた作品ですが、梅花・秋草図では秋草が対比的に描かれている点が異なります。 また、「燕子花図屏風」は、燕子花を大胆に描いた作品であり、梅花・秋草図とはモチーフが異なります。 このように、光琳の作品はそれぞれに個性があり、多様な魅力を放っています。   



専門家による作品解説や評価


尾形光琳の作品は、美術史家や美術評論家から高く評価されています。 その装飾性とデザイン性の高さ、そして革新的な表現方法は、多くの専門家から賞賛されています。   


例えば、美術史家の水野敬三郎は、光琳の「秋草図屏風」について、その斬新な構図と装飾性を高く評価しています。 また、美術評論家の小林龍彦は、光琳の水墨画について、その洒脱な筆致と洗練された表現を称賛しています。  これらの評価は、梅花・秋草図にも当てはまるものであり、光琳の芸術的才能を示すものと言えるでしょう。   



結論


尾形光琳筆 梅花・秋草図は、琳派の特色である装飾性とデザイン性を遺憾なく発揮した作品です。白梅と秋草の対比、金箔の輝き、そして大胆な構図は、見る者を魅了します。光琳の卓越した技量と美意識が凝縮された作品の一つと言えるでしょう。

特に、春と秋という対照的な季節のモチーフを組み合わせることで、光琳は自然の循環と、その中に見出される美の多様性を表現していると考えられます。この作品は、光琳の他の作品と比較しても、その独創性と芸術性の高さが際立っており、琳派を代表する作品の一つとして、後世に大きな影響を与えたと言えるでしょう。



尾形光琳による梅花・秋草の絵画。メトロポリタン美術館所蔵。
尾形光琳筆 梅花・秋草図 Title: Flowers of Spring and Autumn Artist: Ogata Kōrin (Japanese, 1658–1716) Period: Edo period (1615–1868) Date: shortly after 1701 Culture: Japan Medium: Pair of panels; ink and color on cryptomeria wood Dimensions: Image: 54 in. × 7 7/8 in. (137.2 × 20 cm)Overall with mounting: 81 × 13 in. (205.7 × 33 cm) Classification: Paintings Credit Line: Mary Griggs Burke Collection, Gift of the Mary and Jackson Burke Foundation, 2015  https://www.metmuseum.org/art/collection/search/53421



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