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明朝紫硯:日本初の色刷り画譜とその後刷り版

  • 執筆者の写真:  JBC
    JBC
  • 2023年9月23日
  • 読了時間: 4分

更新日:1月25日

明朝紫硯は、1746年(延享3年)に刊行された、日本初の色刷り画譜です 。正式名称は『明朝紫硯』ですが、『明朝生動画園』という別名でも知られています 。中国明代の花卉画を模写したもので、作者は大岡春卜で、京都を中心に活躍した絵師です。出版者は渋川清右衛門、西村源六、松村九兵衛、大野木理兵衛です 。   



日本初の色刷り画譜:明朝紫硯


明朝紫硯は、縦27.0cm、横18.0cmの大きさで、楮紙(こうぞがみ)という丈夫でしなやかな紙を使用しています。   


色刷り技術


明朝紫硯の最大の特徴は、日本で初めて本格的な多色刷りを採用した点にあります。木版色刷り、型紙を用いた合羽刷り、筆彩の3種類の技法を組み合わせることで、繊細で美しい色彩表現を実現しました。   


  • 木版色刷り: 版木に絵柄を彫り、色ごとに版木を替えて重ね刷りする技法です。

  • 合羽刷り: 型紙を用いて、色を付ける部分に糊を置き、その上から絵の具を塗る技法です。ぼかしやにじみなどの表現に適しています。

  • 筆彩: 筆を用いて直接彩色する技法です。


これらの技法を巧みに使い分けることで、花や鳥の微妙な色合いや質感を表現することに成功しました。



影響


明朝紫硯は、中国から伝わった多色刷りの技法を日本で初めて本格的に導入し、その後の多色刷り技術の発展に大きく貢献しました 。また、その精巧な色使いと構成は、後の絵師たちにも大きな影響を与え、特に、葛飾北斎をはじめとする浮世絵師たちは明朝紫硯から多くの図案を学び、彼らの作品にもその影響が見られます。   


明朝紫硯は、中国の彩色画譜である『芥子園画伝』に影響を受けて制作されました。大岡春卜自身も『芥子園画伝』を模写し、中国画の技法を学んだとされています。しかし、明朝紫硯は単なる模倣ではなく、独自の工夫や技法を加えることで、より繊細で美しい表現を実現しています。   




明朝紫硯の後刷り版


明朝紫硯は初版刊行後も、その版木が売買され、複数の後刷り版が出版されました。文化10年(1813年)に京都の菱屋孫兵衛が版木を購入し、下巻を加えて3巻3冊として刊行した版は、特に広く知られています。   


後刷り版の特徴

後刷り版は、初版と比べていくつかの変更点があります。

  • 下巻の追加: 文化10年版では、新たに下巻が追加されました  。これにより、収録作品数が増え、より充実した内容となりました。   

  • 色刷り技術の変更: 初版では色刷りと合羽刷りを併用していましたが、文化10年版では下巻で合羽刷りが使われていません 。これは、当時の印刷技術の進歩や、簡略化によるコスト削減、あるいは出版者の美的感覚の変化などが理由として考えられます。   

  • 装丁の違い: 初版は康煕綴(こうきとじ)と呼ばれる、中国で生まれた装丁技法で、本文の紙を蛇腹状に折り畳み、表紙を付けて綴じる方法です。一方、文化10年版は合冊になっています。


       

初版との違い


後刷り版は、初版の版木を使用しているため、基本的な図案や構成は同じです。しかし、上記のような色刷り技術や装丁の変更、そして下巻の追加により、全体として初版とは異なる印象を与える場合があります。



まとめ


明朝紫硯は、日本で初めて本格的な多色刷りを採用した画譜であり、その後の日本の多色刷り技術の確立に大きく貢献しました。また、中国の『芥子園画伝』から影響を受けながらも、独自の表現を追求することで、日本美術史上に残る重要な作品となりました。

明朝紫硯は、初版刊行後も版木が売買され、菱屋孫兵衛による文化10年版など、複数の後刷り版が出版されました。後刷り版では、下巻の追加や色刷り技法の変更など、時代の変化に合わせて様々な改良が加えられました。

明朝紫硯は、単なる画譜としての価値だけでなく、日中文化交流の証としても、そして、江戸時代の印刷技術と芸術性の高さを示す資料としても、大変貴重な存在と言えるでしょう。

項目

明朝紫硯(初版)

明朝紫硯(文化10年版)

出版年

1746年

1813年

出版社

渋川清右衛門 ほか

菱屋孫兵衛

構成

上中2巻2冊

上中下3巻3冊

色刷り技法

木版色刷り、合羽刷り、筆彩

木版色刷り、合羽刷り(下巻は合羽刷りなし)、筆彩

装丁

康煕綴

合冊




明朝紫硯(初版)


※ 国立国会図書館ライブラリには上中巻は収められていますが、下巻は無し。




上巻


春ト一翁<大岡春朴>//〔画〕『明朝紫硯』巻上,澁川清右衛門 〔ほか3名〕,延享3(1746)刊. 国立国会図書館デジタルコレクション https://dl.ndl.go.jp/pid/1286870





中巻


春ト一翁<大岡春朴>//〔画〕『明朝紫硯』巻中,澁川清右衛門 〔ほか3名〕,延享3(1746)刊. 国立国会図書館デジタルコレクション https://dl.ndl.go.jp/pid/1286871





明朝紫硯(文化10年版)


全(上中下)巻












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