嘉永7年(1854)に刊行された朝顔図譜です。 朝顔の原産地は、いくつか説があります。 ・ヒマラヤかネパールから中国にかけての地域 ・熱帯アジア ・熱帯アメリカ大陸 いずれかの地域から中国を経由(遣唐使、奈良時代末期か平安時代)して日本に伝来しました。世界的に見ても、これほど形態が多種多様に変化した園芸植物は他になく、ほとんどの変異は江戸時代に生まれたものです。
一見ではアサガオとは思えない花と葉を有する変化朝顔が幕末に流行したが、本資料はその図譜である。文化12年(1815)以降、多くの朝顔図譜が刊行されたが、そのなかで最高の出来といわれる。「花撰」は「歌仙」のもじりで、それに合わせて36品を載せた。撰者万花園主人は本名横山正名(1833-1908)、幕臣で陸軍奉行を勤め、維新後には趣味を活かして植木商となった。同じく園芸方面で著名な杏葉館が序文を記しているが、これは旗本の鍋島直孝(1809-60)である。服部雪斎(1807-?)は、幕末~明治前半で活躍した博物画家。本書はアサガオの奇品中の奇品を選んで、花銘と育成者の号を添えた。うち7品は撰者の万花園、2品は杏葉館の育成した品である。そのほか、著名な朝顔愛好家たちの育成品ばかりが並んでおり、現在は失われた黄花品も2点含まれている。花銘の記し方については、『朝かがみ』解題を参照されたい。当館には明治31年(1898)12月再版本(特1-2929)もある。(磯野直秀)
朝顔三十六花撰の解題・抄録
https://dl.ndl.go.jp/pid/1286913/1/17
『朝顔三十六花撰』、万花園主人//撰、服部雪斎//画、嘉永7年(1854) 国立国会図書館デジタルコレクション https://dl.ndl.go.jp/pid/1286913