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江戸の有力な植木屋が書いたと推測される:聚芳図説

更新日:1月27日


江戸時代の園芸文化を伝える貴重な資料


聚芳図説は、江戸時代に作成された植物図譜です。その著者や正確な作成年代は不明ですが、当時の有力な植木屋によって書かれたと推測されています 。本書は、江戸時代の園芸文化、特に草花や樹木の品種改良や栽培技術を知る上で貴重な資料となっています。加えて、聚芳図説の内容は『花壇地錦抄』など、先行する園芸書からの転写が基本となっている点が特徴です 。 


  


聚芳図説の著者


聚芳図説の著者は明らかになっていませんが、江戸時代の有力な植木屋であったという説が有力です 。その根拠としては、図譜に描かれている植物の種類や、解説の内容に、当時の植木屋が持っていたであろう知識や経験が反映されていることが挙げられます。   


例えば、図譜には、当時流行していた変化朝顔や、品種改良によって生まれた様々な種類の菊などが描かれています。また、解説には、植物の栽培方法や、品種改良の技術など、専門的な知識が記されています 。これらのことから、著者は、植物に関する深い知識を持ち、実際に栽培や品種改良を行っていた人物であったと考えられます。   


さらに、著者は江戸染井の伊藤伊兵衛家の子孫か一族である可能性も示唆されています 。伊藤伊兵衛家は、江戸時代に園芸界で大きな影響力を持っていた家系であり、多くの園芸書を出版しています。聚芳図説の著者も、その家系と何らかの関係があったのかもしれません。   




聚芳図説の内容


聚芳図説の内容は、草花、樹木、野菜など、多岐にわたる植物の図譜と解説からなります 。図譜は、写実的な描写で、植物の特徴がよく捉えられています。解説には、植物の名前、特徴、栽培方法などが詳しく記されています。   


特に注目すべきは、桜草と菊の記述です。聚芳図説には、100品種以上の桜草と、290品種以上の中菊が掲載されています 。これは、当時、いかにこれらの植物が愛好され、品種改良が進められていたかを物語っています。   


多数の桜草と中菊の品種が掲載されていることは、江戸時代における園芸の隆盛、そして高度な品種改良技術を示す重要なポイントです 。人々は、より美しい花、より珍しい花を求めて、競い合うように品種改良に取り組んでいたのでしょう。聚芳図説は、そうした江戸時代の園芸文化を垣間見ることができる貴重な資料と言えるでしょう。   




聚芳図説の現代における評価


聚芳図説は、江戸時代の園芸文化を伝える貴重な資料として、現代においても高く評価されています 。   


  • 植物学的な観点:当時の植物の品種や分布を知る上で貴重な資料となっています 。   

  • 園芸史の観点:江戸時代の園芸の流行や、品種改良の歴史を研究する上で重要な資料となっています 。   

  • 美術史の観点:写実的な植物画として、美術的な価値も認められています 。   


   


結論


聚芳図説は、江戸時代の園芸文化を現代に伝える貴重な資料です。著者や出版状況など、不明な点も多いですが、図譜や解説から、当時の植物に対する関心の高さと、品種改良の盛んな様子を窺い知ることができます。特に、100品種以上の桜草と290品種以上の中菊が掲載されている点は、当時の高度な品種改良技術を示すとともに、人々の美意識や園芸に対する情熱を反映していると言えるでしょう。

聚芳図説は、先行する園芸書からの転写を基本としていることから、当時の園芸知識の集大成としての役割も担っていたと考えられます。また、伊藤伊兵衛家との関連が示唆される点も、今後の研究において重要な視点となるでしょう。





巻上


『聚芳図説 3巻』,写. 国立国会図書館デジタルコレクション https://dl.ndl.go.jp/pid/2606793






巻中


『聚芳図説 3巻』,写. 国立国会図書館デジタルコレクション https://dl.ndl.go.jp/pid/2606793







巻下


『聚芳図説 3巻』,写. 国立国会図書館デジタルコレクション https://dl.ndl.go.jp/pid/2606793



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